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平成17年3月20日 福岡県西方沖の地震(Mj7.0)の震源モデルと強震動シミュレーション
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Source modeling and strong ground motion simulation of the West off Fukuoka Prefecture earthquake in 2005
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2005年5月9日
| 飛島建設(株)防災R&Dセンター | 池田 隆明 |
| 京都大学 原子炉実験所 | 釜江 克宏 |
| 飛島建設(株)防災R&Dセンター | 三 輪 滋 |
| 京都大学 | 入倉孝次郎 |
1.はじめに
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平成17年3月20日に福岡県西方沖を震源とするマグニチュード7.0の地震が発生し,福岡県と佐賀県では震度6弱の揺れが観測された.震源ごく近傍の玄界島では,家屋の倒壊やがけ崩れなどの被害が多数発生し,直下型地震の脅威が再認識された.
本報告では,福岡県西方沖の地震に対して,経験的グリーン関数法を用いたフォワードモデリングにより震源モデルを構築し,震源周辺の強震動シミュレーションを行った.
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2.地震の諸元
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図1に福岡県西方沖の地震の震源を示す[1].この地震は余震分布と本震の発震機構から,北西−南東方向のほぼ鉛直な断層面を持つ左横ずれ断層と推定されている[2]. 図1に震源位置とF-net[3]によるメカニズム解,および浅野・岩田[4]による想定断層面を示す.この地震における震源近傍を含む地震動記録が防災科学技術研究所のK-NET[5]およびKiK-net[6]で観測されている. 図2(a), 図2(b)にK-NETとKiK-netの地表水平観測記録(水平二成分の合成)の最大値分布を示す.図からわかるように,震源近傍では大きな地震動が観測されている.表1に地震の諸元を示す.
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図1 福岡県西方沖の地震の震央と想定断層面,および余震(2004/3/20 20:38)の震央
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(a)最大加速度
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(b)最大速度
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図2 地表における水平方向の地震動の最大値
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表1 福岡県西方沖の地震の諸元
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| 発震日時 [7] | 2005/3/20 10:53:40.3 |
| 震央 | 33.739N 130.176E [1] 33°44.3'N 130°10.5'E [7] |
| 震源深さ | 9.2km [1] 9km [7] |
| マグニチュード(Mj) [7] | 7.0 |
メカニズム [3] [STR:RAKE:DIP] | 122: - 11:87 213:-177:79 |
| 地震モーメント(Mo) [3] | 3.97×1018Nm |
| モーメントマグニチュード(Mw) [3] | 6.4 |
3.震源破壊過程
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浅野・岩田[4]は震源周辺のK-NETおよびKiK-netの観測記録を用いて波形インバージョン解析を行い,震源の破壊過程を求めている. 図3に断層面におけるすべり分布を示す.断層面は,余震分布の広がりを参考に,長さ26km,幅18kmとされている.震源(☆)より南側のやや浅い部分ですべりの大きな領域が見られる.この他にも,複数の研究者[8],[9],[10]によって破壊過程が示されているが,ほぼ同様な結果を示している.
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図3 浅野・岩田による震源破壊過程と福岡県西方沖の地震の震源モデル
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4.震源のモデル化
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KiK-netの地中観測記録を用いた経験的グリーン関数法によるフォワードモデリングによりアスペリティの位置や大きさ,応力降下量の定量化を行った.
釜江・入倉[11]は,長周期地震動記録を用いたインバージョン解析を参考として設定したアスペリティモデルが短周期領域も含んだ広帯域強震動予測に有効であるとしており,本検討でも同様に浅野・岩田の震源モデルを参考にアスペリティの大きさや位置の初期値を設定した.
対象としたKiK-net観測点は断層の走向方向に位置するFKOH03(宇美)と断層に対してほぼ直行方向に位置するSAGH01(鎮西)の2地点である. 図1にFKOH03とSAGH01の位置を示す.断層の位置や形状は,浅野・岩田に従った.経験的グリーン関数には3/20 20:38に発生したMj4.5の余震記録を使用した. 図1に余震の震央とF-netによるメカニズム解を示す.余震の応力降下量や面積は,FKOH03の地中観測波から求めた震源変位スペクトルからコーナー周波数を読み取りBruneの式[12],[13]により評価した.波形合成において,ライズタイムは試行錯誤の結果0.6秒とし,S波速度と破壊伝播速度はそれぞれ3.5km/sと2.5km/sとした.また,高周波数領域が過大評価となったため,fmax=6.0Hzとして補正を行った.なお,余震記録の精度を考慮して,観測記録には0.2〜10.0Hzのバンドパスフィルター処理を行った.
図3に設定した震源モデル(アスペリティの位置や大きさ)を浅野・岩田のすべり分布に加筆する.また,表2に最適震源モデルのパラメータを,表3に余震の諸元を示す.強震動はアスペリティのみから生成されると仮定し,背景領域は考慮していない.アスペリティの大きさは100km2(10km×10km),応力降下量は13.3MPaである.破壊はアスペリティ内の★印から円状に伝播すると仮定した.
図4(a), 図5(a)にFKOH03とSAGH01における観測波形と合成波形の比較を示す(NS成分).2地点とも合成波形と観測波形の最大振幅や波形の形状はほぼ再現できている.断層走向方向にあたるFKOH03では,観測速度波形に断層破壊の指向性効果と思われるパルス波が確認できるが,その再現精度については現時点ではまだ十分ではない.そのため,余震の選択なども含め再検討する必要がある.
図4(b), 図5(b)に変位フーリエスペクトルの比較(NS成分)を, 図4(c), 図5(c)に加速度応答スペクトル(NS成分,トリパタイト:減衰定数5%)の比較を示す.時刻歴波形と同様にスペクトルの一致度は高いことわかる.
図6にアスペリティの総面積と地震モーメントとの関係式を示す.地震モーメント(Mo)は浅野・岩田の結果(Mo=1.25×1019)に従った. 実線はSomerville et al.[14]が示したスケーリング則である.福岡県西方沖の地震の震源モデルは,このスケーリング則をほぼ満足していることがわかる.
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表2 最適震源モデルのパラメータ
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| 震源 [4] | 33.745N 130.160E D=14km |
メカニズム [3] [STR:RAKE:DIP] | 122: - 11:87 |
| せん断波速度(Vs) | 3.5km/s |
| 破壊伝播速度(Vr) | 2.5km/s |
| アスペリティの面積(Sa) | 100km2 |
| 上端深さ | 2.0km |
| 応力降下量(Δσa) | 13.3MPa |
| ライズタイム | 0.6s |
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表3 余震の諸元
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| 発震日時 [7] | 2005/3/20 20:38:16.4 |
| 震央 | 33.746N 130.170E [1] 33°44.7'N 130°10.2'E [7] |
| 震源深さ | 11.2km [1] 11km [7] |
| マグニチュード(Mj) [7] | 4.5 |
メカニズム [3] [STR:RAKE:DIP] | 202:-173:85 111: - 5:83 |
| 地震モーメント(Moe) | 5.6×1015Nm |
| 面積(Se) | 4.0km2 |
| 応力降下量(Δσe) | 1.66MPa |
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図4 KiK-net宇美(FKOH03)における観測結果と合成結果との比較(NS成分)
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図5 KiK-net鎮西(SAGH01)における観測結果と合成結果との比較(NS成分)
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図6 アスペリティの総面積と地震モーメントとの関係
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5.経験的グリーン関数法による強震動シミュレーション
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構築した震源モデルを用いてFKO006(福岡)の強震動シミュレーションを行った. 図7に合成結果と観測結果と比較を示す.最大速度に比べ最大加速度は観測結果を過大に評価していることがわかる.応答スペクトルにおいても,1秒以下の短周期領域を過大評価しており,地盤の非線形効果の影響によるものと考えられる.新潟県中越地震のK-NET小千谷では非線形性を考慮した波形合成を行い,良好な結果を得ている[15].今後,同様の検討を行い,構築した震源モデルの妥当性の検証を行う予定である.
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図7 K-NET福岡(FKO006)における観測結果と合成結果との比較(NS成分)
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謝辞
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本検討ではK-NETおよびKiK-netの観測記録,F-netおよびHi-netの情報を使用させて頂きました.また図の一部はGMTを使用して作成いたしました.
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参考文献
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- 気象庁:気象庁一元化処理 震源要素, http://www.hinet.bosai.go.jp/REGS/JMA/list/
- 地震調査研究推進本部:福岡県西方沖の地震活動の評価, http://www.jishin.go.jp/main/chousa/05apr_fukuoka/index.htm
- 防災科学技術研究所:F-net,広帯域地震観測網, http://www.fnet.bosai.go.jp/freesia/index-j.html
- 浅野公之・岩田知孝:震源域近傍強震動記録からみた2005年福岡県西方沖の地震の震源過程 (Ver.3), http://sms.dpri.kyoto-u.ac.jp/k-asano/050320inv.html
- 防災科学技術研究所:K-NET,強震ネットワーク, http://www.k-net.bosai.go.jp/k-net/
- 防災科学技術研究所:KiK-net,基盤強震観測網, http://www.kik.bosai.go.jp/kik/
- 気象庁:震度データベース, http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/shindo_db/shindo_index.html
- 東京大学地震研究所:-震源過程・強震動・被害-, http://saigai.eri.u-tokyo.ac.jp/saigai/fukuoka/fukuoka.html,
- 防災科学技術研究所:近地地震動記録による福岡県西方沖で発生した地震の震源インバージョン, http://www.k-net.bosai.go.jp/k-net/topics/fukuoka050320/
- EIC地震学ノート:3月20日福岡県西方沖の地震(Mj7.0), http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/sanchu/Seismo_Note/2005/EIC163.html
- 釜江克宏・入倉孝次郎:1995年兵庫県南部地震の断層モデルと震源近傍における強震動シミュレーション,日本建築学会構造系論文集,第500号,29-36,1997.10.
- Brune, J. N.:Tectonic stress and the spectra of seismic shear waves from earthquakes, Journal of Geophysical Research, Vol.75, pp.4997-5009, 1970.9.
- Brune, J. N.:Correction, Journal of geophysical research, Vol.76, p.5002, 1971.7.
- Somerville, P. G.,K. Irikura, K.,R. Graves,S. Sawada,D. Wald,N. Abrahamson,Y. Iwasaki,T. Kagawa,N. Smith and A. Kowada:Characterizing crustal earthquake slip models for the prediction of strong ground motion, Seismological Research Letters, Vol.70, No.1, pp.59-80, 1999.
- 池田隆明・釜江克宏・三輪滋:2004年新潟県中越地震(Mj6.8)の震源のモデル化と強震動シミュレーション,2005年度日本建築学会大会(投稿中)
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